顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

顎関節症とセルフケアについて

顎関節症にはセルフケアが大事であると言う話を以前いたしましたし、最近,顎関節症で調べるとセルフケアという単語がよく出てくると思います。

 

これは、世界的な顎関節症(TMD)に関する声明において、歯科医師によるプロフェッショナルケアは、必ずホームケア(セルフケア)と行われるべきであるとされていることでもわかります。

米国歯科研究会による顎関節症(TMD)基本声明(日本補綴学会)

https://www.hotetsu.com/s/doc/aadr3.pdf

 

セルフケアには「顎を守るセルケア」と「顎の機能回復のためのセルフケア」があります。 

顎関節症の原因は、生活習慣や悪習癖による持続的な顎関節や咀嚼筋への過負荷により

生じる(リスク因子)と言われています。

このリスク因子には、無意識の咬みしめやTCH(Tooth contacting habit・上下歯列接触癖)などや、頬杖、片側咀嚼、横を向いてやうつぶせ寝、あるいは激しい運動や歯ぎしりなどがあります。 ですから、これに気づき、生活習慣や悪習癖を改善することが重要となるわけです。

これが顎を守るためのセルフケアです。

 

歯科医院で良く行われるスプリントというマウスピース様の装置も、寝ている時に顎や咀嚼筋を保護することが主な役割となります。 

ただ、症状が軽度であれば、これだけで症状は改善しますが、負担を軽減するだけでは口が開かないなどの機能の改善はできません。

 

私のところに来る患者さんに聞くと、ネットで調べたり、歯科医院や大学病院で指導されて「上下の歯を合わさないようにしているが、症状は変わらない、良くならない」といった方も多いです。

 これは、腰や肩などの運動器では、痛くても適度に動かすことが必要とされています。顎関節も同じで、機能の回復のためには、運動療法といって痛くても動かすことが必要になります。

 

これにはいろいろなやり方があり、患者さんそれぞれの症状に合わせた運動療法の処方が必要になります。

 

一般的には、とりあえず指を縦にして三本(人差し指、中指、薬指)が入るように大きく開けること。もし入るようでも、三本を入れて口を大きく伸ばすことが重要であり、これを続けることで痛みや開口障害が改善することが多いということです。

 

これを、食前食後、入浴時に10回ずつ行うことです。最初は、痛みが強くなったり、顎が鳴る、あるいは音の仕方が変わることがありますがたいていの場合心配はいりません。ただ心配なら無理しないで歯科医師に相談してください。

 

私も、以上のようにこれまで指導してきましたが、最近、新しいやり方を取り入れました。

これは「あいうべ体操」です。

「あいうべ体操」はご存じの方もあると思いますが、口呼吸を鼻呼吸にするために、みらいクリニックの今井先生が考案された体操です。

詳しくは、みらいクリニックの今井先生のHPをご覧ください。

ここにyoutubeが載っているので観てみてください。

 

舌の運動も行った方が良いです。顎関節症の人は舌も硬くなっている人が多いので、舌を口の中で回したり、舌の先で左右の頬の粘膜を押す訓練も行ってみてください。

 

日本歯科大新潟の「あごの関節、歯ぎしり外来」の永田先生と昨年の日本顎関節学会シンポジウム「セルフケアをマスターする」でご一緒に講演させていただきました(http://kokuhoken.net/jstmj/meeting/jstmj33/program.html)が、永田先生はご自身の大学診療科で、セルフケアとして「あいうべ体操」を行う事で、スプリント療法(マウスピース様装置)に比べて顎関節症状の改善がみられたとう結果を、RCT(ランダム化比較試験)を行い報告しています。

 

実際、私も最近の臨床で取り入れてみると、これまで指導していたセルフケアが単調でなかなか患者さんのモチベーションが上がらなかったのに比べて、取り入れていただけるようになり、治療効果が上がっています。

 

もし、顎関節症が気になるようなら、歯を離すという事だけでなく、ためしに「あいうべ体操」を行ってみてはいかがでしょうか?

 

なにかわからないことがあれば、島田までご連絡ください。

https://www.green-dc0418.com/contact-2

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

JAOS総合診療歯科医修得コース・顎関節症シリーズのセミナー受講者募集中です!

NPO法人 日本・アジア口腔保健支援機構(JAOS)認定・総合診療歯科医修得コースで講師として顎関節症シリーズのセミナーを行います!

顎関節症シリーズ 

第1回 治すための顎関節症入門ー理論・診断編ー 

              2021年4月11日(日) 受講者受付中 

第2回 治すための顎関節症入門ー治療編ー 2021年6月27日(日)

 

第1回 治すための顎関節症入門ー理論・診断編ー

講師:島田淳  

詳細・お問い合わせ・申し込み JAOS事務局

→ https://npo-jaos.org/seminar/jaos0411/

開催日時 

 2021年4月11日(日) 

  午前9時~11時 オンラインセミナー 

  午後11時~午後1時 会場にて、症例を交えたチェアーサイドで行い触診と顎関節病態診断、漢方的診察

主催 特定非営利活動法人日本・アジア口腔保健機構(JAOS)

開催場所

 オンライン午前9時~11時(定員50名) 会場参加:午前9時~13時(先着10名様) 

 場所:JR水道橋駅徒歩3分 日本歯科新聞社3F

参加対象

 歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、歯科医療従事者全般、看護師、介護士の方

参加費用:オンライン受講費用(午前9~11時のみ):5,500円(税込み) 会場参加受講費用(午前9~13時):2,2000円(税込み)

内容:顎関節症を治すために理解するポイントは、顎関節症が一つの疾患ではなく、顎関節、咀嚼筋に関連したいくつかの病態を包括した診断名であり、顎関節症の発症、継続に心理社会的要因が関係しているケースも多いことです。つまり同じような症状でも、原因や症状を修飾しているリスク因子が異なること、同時に全身的な症状を訴えることがあることなど、患者個々に合わせた対応を考えることが重要となります。また、顎関節症は、腰、肩、膝などと同じ運動器疾患であり、顎関節の特殊性を踏まえ、運動器疾患への対応法を理解することが必要です。

前半のオンラインセミナーでは、治すための顎関節症の考え方、診査・検査、病態診断、そして治療戦略の立案法について臨床例を交え解説いたします。後半のセミナーでは、チェアーサイドで行う簡易検査法の実習と得られた情報をどのように生かし治療戦略を立案するかについて、漢方的診断法を含み、臨床例を交え解説いたします。

 

午前9時-11時 オンラインセミナー
顎関節症シリーズ:治すための顎関節症入門-理論・診断編-
講師:島田淳 120分

午前11時-午後1時 会場にて
症例を交えた診察・検査、病態診断、治療計画立案の実際
(チェアーサイドで行う触診と顎関節症病態診断、漢方的診察)
講師:島田淳 120分

 

講師:島田淳 

神奈川歯科大学臨床教授 日本顎関節学会専門医・指導医・理事 口腔顔面痛専門医・指導医・評議員 日本補綴学会専門医・指導医 医療法人社団グリーンデンタルクリニック理事長

お問い合わせ・申し込み JAOS事務局→ https://npo-jaos.org/seminar/jaos0411/

NPO法人 日本・アジア口腔保健支援機構(JAOS)とは

 → https://npo-jaos.org/about-us/

NPO法人 研修会/セミナーの案内 → https://npo-jaos.org/seminar/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顎関節症スプリント療法ハンドブック

顎関節症スプリント療法ハンドブック

  • 発売日: 2016/06/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

日本顎関節学会からの依頼で顎関節症の運動療法についての論文を顎関節学会誌に寄稿しました。

 顎関節症は基本的に腰や肩、膝などと同じ運動器の疾患です。ですので腰痛や肩こり、膝関節痛と同じように運動療法が有効であるというのが世界的な考え方です。ただ顎関節は頭部における唯一の滑膜性関節であり,左右の下顎頭が共同で動き,回転と滑走運動が可能な多軸関節であり、また,歯列が運動を誘導し,停止させることから,顎関節の個々の構成要素と,上下の歯列および歯の咬合接触状態は極めて密接な関係があるなど,他の関節にない特徴を有しています。そして開閉口時の顎の動きを決定しているのは,下顎頭を包んでいる関節円板と,関節包であり,関節の中の形態変化により顎の運動も変化します。特に関節円板の転位,変形の状態により開閉口運動は大きな影響を受け、そして顎関節の形態変化は,咬み合わせを変化させることがあります。ですので、顎関節症では腰、肩、膝などの運動療法を参考にしながらも、顎関節症独自の運動療法を確立しなければなりません。

整形外科では、通常、顎関節症を扱っていません。これは顎関節が他の関節と違い、複雑な動きをするとともに、咬み合わせが関係しているためです。ただ逆に言えば咬み合わせを診るためには、顎関節症を知らなければなりません。

今回の論文では、顎関節症の中でも、関節円板の転位が関係し、開口障害や痛み等を起こす顎関節円板障害と変形性顎関節症の運動療法の考え方について、昨年の第33回日本顎関節学会のシンポジウム1「顎関節円板障害、変形性顎関節症の運動療法に対する運動療法」での講演をもとにまとめました。これまでも顎関節症の運動療法についての研究はありましたが、おそらくこのような形で顎関節症の運動療法の考え方が論文になったのは初めてと思います。

顎関節学会雑誌最新号(第32巻3号)に掲載されていますが、最新号は会員誌か閲覧できませんので、HPにPDFを載せておきますので、参考にしていただければ幸いです。

質問などありましたら、お問い合わせからお願いいたします。

 

 

 

 

 

上下の歯を合わせない!?

 1日24時間で、上下の歯が接触しているのは、大体20分程度と言われています。これは口を開ける筋肉と閉じる筋肉があるので、上下の歯が接触していると言うことは、口を閉じる筋肉がずっと緊張して、顎を持ち上げている事になります。これでは顎をが疲れてしまいますよね。実際の調査した時に、上下の歯が接触しているかどうか調べるのは難しいので、筋肉の緊張を計測しているのですが、1960年代に、世界的に同じような研究が行われ、大体、どの調査も20分程度でした。そこで、長く時間上下の歯を合わせるのは悪習癖であると言う考え方が出てきました。それがTCH(tooth contacting habit),上下歯列接触癖と言います。今、顎関節症について調べると、あるいは歯科医院へ行って、顎が痛い、口が開かないと言うと、上下の歯を合わせないと言う話が出てきます。この事を知り、歯を離す事を気をつけるだけで、顎の痛みが取れたり、口が開くようになる人は多いと思います。でも、その一方で、そんな事言ったって、そんなに簡単にできない。気をつけてるけど良くならないと言う人も少なくないようです。これを読まれている「あなた」も頷いるのではないですか?そう、私のところに、顎の調子が良くならないと相談に来られる人は、そんな人が多いのです。
 筋肉の緊張が慢性化している人は、単純に歯を離すだけでは良くなりません。筋肉は負担を軽くするだけでは、緊張は取れないのです。では、どうしたら良いのでしょうか?マッサージ?それも一つですね。筋肉は緊張すると血流が悪くなり硬くなります。温めたり、マッサージも効果はありますが、緊張している筋肉に一番必要なのは、伸ばす事。ストレッチです。顎は、肩や膝の関節と違い、大きく口を開けると、顎の骨は、顎の関節の中から前に出ます。ですから、口を開ける筋肉のストレッチは、顎の骨が前に出るように口を開けなければなりません。具体的には、下の歯が上の歯より前に出るように動かして、その位置から大きく開けます。どうでしょう?少し顎が伸びた感じになりませんか?通常に生活しているなかでは、ここまで顎を動かす事はありません。顎が伸びるまで動かさないと、次第に筋肉も関節も硬くなってきます。そうして、顎が動きづらくなり、くいしばりやすくなり、筋肉や、関節が緊張すると言う悪循環を作っていきます。ですから、上下の歯を合わせないと言う呪文に捉われず、そんな事は気にしないで、顎のストレッチをやりましょう。気がついた時に何回もやると良いのですが、少なくとも、お風呂に入って、筋肉や関節が温まり動きやすくなった時にやると効果的です。是非、試してみてください!