顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

Q&A(6)朝起きた時に口が開きません!

Q: 顎関節症で数年前までほとんど口が開きませんでしたが、その後治まり普通の生活ができるようになりました。自然に治ってよかったと思っていたのですが、最近また痛くなってきました。特に朝起きた時に、口が1㎝ぐらいしか開かなくなり、無理に開けようとすると、顎に”ゴキっ”という鈍い音が毎回するようになり10分程度で治ります。歯科医院へ行きマウスピースを作ってもらい3か月経ちますが、朝起きた時の症状は変わりません。

 整体へ行き、マッサージや鍼をやってもらいましたが効果は見られません。どこへ行ったらいいのでしょうか?

A: 起床時に口が開かなくなると言うことは、寝ている時に噛みしめや歯ぎしりがある可能性が高いですね。おそらくは寝ている時の噛みしめや歯ぎしりにより、顎関節に負担がかかり、顎関節の中の関節円板という軟骨様の組織がズレて引っかかってしまい、口が開かなくなっていると思います。症状がひどい人の場合は、そのまま口が開かなくなってしまうのですが、おそらく症状が軽度なのでズレが戻りやすくなっているのでしょう。ただ、関節円板のズレは、最近では顎の症状がない人でも50%以上はズレていると言われていて、ズレていること自体は問題がないのですが、今回のように口が開かなくなり、痛みもあると言うことであれば治療が必要です。

 噛みしめや歯ぎしりは、以前はかみ合わせが原因と言われていた時期もありますが、最近では、自律神経などが関係して筋肉の緊張が生じて、噛みしめや歯ぎしりが起こると言われています。特に眠りの深いところから浅いところに変化するときに強くなると言われています。原因は、ストレス、性格、遺伝、飲酒、喫煙、薬や病気の副作用などが言われていますが、個人差が大きいため詳しくはわかっていません。ですから、根本的な治療法はなく、自己暗示法や寝る前に筋の緊張がないようにリラックスすること、最近では昼間、無意識にかみしめる癖をなくせば、睡眠時の噛みしめや歯ぎしりも減るということが言われています。また、人によっては枕が高い(噛みしめやすくなる)こと、うつぶせ、いつも片側を下にして寝ることなどが関係していることもあり、これらに注意することで朝の症状が改善することもあります。また、ボツリヌス療法といって顎の筋肉に注射することで筋肉の緊張を弱める治療(当院で治療可能)や漢方が効くケース(当院で治療可能)もあります。

 一般的には、マウスピース様の装置を寝ている時に装着することで、噛みしめや歯ぎしりから関節が保護され、症状が軽減する場合が多いのですが、今回の質問のように、装置を装着しても改善しない、悪化するケースがあります。通常、このマウスピース様の装置は、噛む面を平らに作りますが、人によっては平らにしたことにより顎が後ろに下がってしまい、かえって顎の関節が圧迫され、症状が改善しないと言うことになります。このような場合は、装置に工夫をして顎が後ろに下がらないようにすることで、起床時の症状が改善する場合が多いです(当院で治療可能)。ただこのような効果を出す装置の作り方は難しく、うまく調整しないとかえって症状が悪化する場合もあるので一般の歯科医院では対応していません。というかこのようなことを考えたこともない歯科医師がほとんどでしょう。

 顎関節症は、基本的には顎関節や筋肉(咀嚼筋)の問題なので、整体などで対応ができるケースもありますが、今回のように、睡眠時の力のコントロールが必要な場合は歯科でないと対応は難しいかと思います。ただ歯科でも顎関節症を治療できる歯科医師は少ないので、日本顎関節学会HPに載っている専門医に相談されると良いかと思います。

 

 医療法人社団グリーンデンタルクリニックでは、顎関節症を専門的に治療しています。症状、治療に対する相談は、グリーンデンタルクリニックHPのお問い合わせより無料で行っています。ただ診察、治療に関しては、保険外治療となっておりますので、詳しくはメール等でお問い合わせください。

Q&A (5) 顎がカクカクしたので、口腔外科に行きましたが治りません。

Q: 最近、右の顎関節がカクカク鳴り始め、次第に食べ物を噛んでいるとき右で噛むようにすると左の関節が引っかかり右で噛みにくくなりました。近くの口腔外科に行くと、右に顔が歪んでいるとの事で、小さなマウスピースを作ってくれ、左上の歯に付けるよう言われました。しかし、マウスピースを付けたら右顎のこめかみと耳の間の骨の辺りが外れて、骨がうまくはまってないような、そんな違和感になったので付けるのをやめました。後日、その旨を先生に伝えたところ、右に顎が行き過ぎていて口を開ける時右に開くとの事で、歯を4本削られました。けれど、余計に右顎の骨に上記のような違和感が出てきてしまって、毎日顎が気持ち悪くて落ち着きません。うまく骨がハマるまで口をパクパクしちゃっている状態です。歯を削っただけで左に顎がズレる、もしくは左に口が開くようにする事は出来るのでしょうか?顎関節症の方はみんなこのような気持ち悪い違和感を抱えてるんでしょうか?


A: 顎関節症は、基本的には顎の関節と筋肉(咀嚼筋)の問題です。最近かみ合わせを治したわけでもないのに、顎がカクカクするのは、おそらく寝ている時や仕事中などに噛みしめていたりして、顎に負担がかかり、顎の中の関節円板というコラーゲンの塊がズレ、それが次第に引っかかりが強くなってきたのではないかと思います。ですから、引っかかりが違和感になり、上手く骨がはハマるまでパクパクするような状態となっていると思います。意味がわからないようなことではありません。このような状況でミニスプリントや咬合調整は、行わないのが最近の世界的な考え方です。特に歯を削るとかえって顎が不安定になるのでやめた方が良いと思います。
顎がズレるのを治すには運動療法などで顎の動きをよくすることが必要です。顎関節症は歯科で診るのが通常ですが、顎関節症の考え方は、ここ数年で大きく変わったため、現在、運動療法など、新しい治療法を残念ながらどこでも受けられるわけではありません。このブログにも詳しく書きましたが、たとえば日本顎関節学会のHPに専門医が載っていますので、それを参考に問い合わせてみてはいかがでしょうか?

Q&A(4) 顎が鳴る。顔が左右非対称。

Q:現在36歳 女性です。十代の頃から時々顎がガクっと鳴っていました。
現在ではあくび、歯科治療で口を開ける度、表情筋の運動時など かなりの頻度でガクっと鳴ります。痛みはほぼありませんが 顔が左右非対称である事に関係しているのではという疑惑や噛み合わせにも自信がないので相談させていただきました。
A:十代の頃から顎が鳴り、、現在は鳴る頻度が高くなってきたという事でしょうか?
 顎が鳴る原因として多いのは、関節の中の関節円板と言う線維状組織のズレです。  
ただ昔から鳴っていたとすると、もともとそういう骨の形の問題があるかもしれません。
一般的に顎が鳴る人の割合を、会社の検診などで調べると、4割ぐらいの人が鳴っているようですし、  関節円板のズレも、音がない人の3〜5割の人がズレていると言われているので  痛みや、口が開きずらいという症状が無ければ特に直す必要はありません。
 ただ、もし頻度が増えてきているようであれば、顎に何か負担が掛かっているのかもしれませんね。  仕事や家事の時噛みしめていませんか?

 1日で歯が当たっているのは20分程度と言われています。
 その時間が長いと、顎に負担がかかるので顎関節症になりやすいと言われています。
 咬み合せの問題と言うよりも、負担をかけている時間の問題が大きいかと思います。  
 もし、改善する可能性があるとすると、例えば大きく口を開けて、下顎を前に突き出して、上の歯より下の歯が前に出るように閉じて、前に出したまま開けてみてください。  
 これを何回かやってみて、音がしないようであれば、音が軽減する可能性があるのでこの運動を、食前食後、あるいは仕事中などに行ってみてください。

顎関節症の治療について

明けましておめでとうございます!
昨日より通常通り診療が始まりました。

初日より、数名の顎関節症の患者さんがいらっしゃいました。

これまでこのブログでも述べましたように、顎関節症は基本的には、運動器の機能障害です。
その原因は、主には生活習慣や悪習癖、あるいは睡眠時のはぎしりによる顎関節や咀嚼筋への過負荷です。ただ、ここに咬み合わせが絡む場合と絡まない場合があります。

 多くの場合、咬み合わせを触ることなく治すことができます。逆に、治療の最初に段階で、咬み合わせを変えたために、どんどん症状が悪くなり、迷路にはまり込んでしまう患者さんもいます。

 咬み合わせを変えることの多くは、歯を削ることになりますが、削った歯は戻りません。

 歯を削らずに顎関節症を治すことは多くの場合可能です。
 
 私はできれば歯を削らずに顎関節症を治したいと思っています。

 しかし、当然咬み合わせが大きく関わっている症例があるのも事実です。この場合は、早めに咬み合わせを治さないと症状が取れないこともあります。

 顎関節症を治療する歯科医師に求められるのは、目の前の症例に対してどのようなアプローチがベストかを選択出来る能力と思います。
 また、治療段階により、アプローチの仕方を変えなければいけないこともあります。この変える時期を的確に判断できることも必要です。

 同じような症状を持つ患者さんでも、それぞれ、その症状の背景を読めなければ症状の改善は望めません。

 その症状が生じた原因を知るには、患者さん本人から話を聞かないとわかりません。

 ですから、顎関節症の患者さんの治療では、通常の歯の治療よりも、お話を聞くことに時間がかかります。でも、初めを間違わないことが、結局は近道と思っています。

 今年も、顎関節症で悩む多くの患者さんを少しでも救うことができるよう努力していきたいと思っています。

 何かお困りのことがあれば是非ご相談ください。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

医療法人社団グリーンデンタルクリニック
島田淳