顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

新型コロナと顎関節症

 緊急事態宣言後、ここに来て感染者が増大し不安な日々を送られている方が多いと思います。私の診療所でも、感染対策をより徹底し対応しています。
 現在の状況では、まだまだマスクは必要ですね。そんな中で、マスク着用と顎関節症の関係について考えてみました。
 顎関節症の原因の一つに、上下の歯を合わせる時間が長い事が挙げられています。1日24時間の中で、上下の歯が合わさっている時間をご存知ですか?
 最近では、知ってる人がだいぶ増えましたが、平均すると20分程度なんです。そんな事ないよ。私はいつも接触していると言う方もたまにいらっしゃ居ますが、これは、1960年代に世界的に同じような研究がなされ、どの国でも、だいたい20分ぐらいでした。
 口を開け閉めするのに、口を開ける筋肉と口を閉じる筋肉があるのですが、上下の歯を合わせると言う事は、口を閉じる筋肉が、ずっと顎を持ち上げている事になるので、筋肉は疲れてしまうし、歯も刺激を受けすぎるので、知覚過敏などになりやすいと言われています。当然、個人差はあるので、上下の歯が合わさっている時間が長くても、何も症状は出ない人はいますが、そのような人でも、長い間に筋肉や歯に疲れが溜まってしまい、何かのきっかけで顎関節症や知覚過敏が出る事があり、一度症状が出てしまうと、そのような下地があるので治りづらいようです。
 そうならないためには、普段から、上下の歯が合わさらないようにしておく事なのですが、今回の新型コロナ騒ぎで、マスクを着用する時間が増えて、顎が固定されるようになり、上下の歯が合わさっている時間が長くなる事で、顎関節症の患者さんが増えているようです。マスクをしていても、上下の歯が合わさらない、顎に力が入らないよう気をつける事が大切です。
 ただ、実際は上下の歯を合わせないようにしてるのは難しいですよね。歯科医師に、歯を合わせないように指導されたけど、それができれば苦労しないという方がいらっしゃいました。確かにそれが出来て、症状が改善する人は軽症ですので、まずは気をつけてみてください。

 それが出来ない方には、そんな時はどうすれば良いか、次回、お教えしますね。

 

 

 

歯科顎関節症専門医のつぶやき

 前回更新してから、早いもので2年も経ってしまいました。前回まで連載したものをまとめて「歯医者に聞きたい 顎関節症がわかる本」として口腔保険協会というところから上梓しましたが、おかげさまで反響は大きく、取材等の連絡があり、雑誌に記事が掲載されたり、本を見て問い合わせくださる方や、実際に本を持参して来院される方もいらっしゃいます。私としては、本を上梓したことで、ひとまず顎関節症は区切りがついたかと思っていたのですが、問い合わせいただいたり、来院される方からお話を伺うと、まだまだ顎関節症の正しい考え方が、世間一般だけでなく歯科界でも理解されていないことを痛感し、「歯科顎関節症専門医のつぶやき」というタイトルでリニューアルすることにしました。

 「歯科顎関節症専門医?」聞き慣れない言葉ですよね。日本顎関節学会という、主に顎関節症を扱う歯科の学会では、試験や症例報告を行い専門医を認定しています。顎関節学会のHPに掲載されています。http://kokuhoken.net/jstmj/certification/list.html

見てわかるように、日本に350人ほどしかいません。専門医がいない県もあります。顎関節学会では、全ての県に専門医を作るよう努力していますが、なかなか希望する歯科医師がいないのが現状です。最も1つの県に1人しか専門医がいないのでは、とても足りませんが・・・・。

 なぜ顎関節症に力を入れる歯科医師が少ないのでしょうか?顎関節症は、通常の歯科疾患である、う蝕や歯周病と違い、目で見て原因がわかりづらい、見えないところを診る技術が必要。そのため、大学の授業などでも、しっかりとした教育が行われていません。また、現在、顎関節症の検査は、医療保険には入っていません。また治療についても、ほとんどカバーされていません。顎関節症を診るのは大変なのに、保険点数がない。そのため顎関節症を診る歯科医師が少ないという現状となってしまっています。現在、私は顎関節学会の専門医というだけでなく、理事として、顎関節症の正しい考え方を広めるべく、歯科医向けに「顎関節症治療の指針2018」http://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2018.pdfを、顎関節学会の委員として、大学の先生たちと作りHPに掲載しています。また、保険医療推進委員会委員長として、医療保険における顎関節症関連の項目を増やすべく、厚労省へ行くこともあります。ただ、顎関節症は、症状は同じでも、その原因や対応法は個人差が大きいので、実際の臨床では、臨機応変な対応が求められています。しかしその一方で、顎関節症のほとんどは、生活習慣病のような部分が多いので、症状が出始めたときに、適切な対応ができれば、そんなにひどくならず治る場合がほとんどですので、患者さん向けに「歯医者に聞きたい 顎関節症がわかる本」を上梓しました。ただそれでも、個々の事例を網羅することはできないので、今回から「歯科顎関節症専門医のつぶやき」として、顎関節症に悩む人に有益な情報をお届けできればと考えております。

 昨日まで、日本顎関節学会がWEB開催されていて、私もシンポジウムのシンポジスト、座長、個人での口演などで係わっておりました。ちなみに来年

34回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会では、副大会長として学会運営に係わることになっており、これもプログラム制作などで忙しのですが、とりあえず直近の学会は終わり一段落つきましたので、顎関節症専門医として気がついたことを「つぶやき」として掲載していく予定です。

 ご質問なども歓迎いたしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ご質問はこちらからどうぞ → グリーンデンタルクリニックHPお問い合わせ

 

 

 

Q&A(6)朝起きた時に口が開きません!

Q: 顎関節症で数年前までほとんど口が開きませんでしたが、その後治まり普通の生活ができるようになりました。自然に治ってよかったと思っていたのですが、最近また痛くなってきました。特に朝起きた時に、口が1㎝ぐらいしか開かなくなり、無理に開けようとすると、顎に”ゴキっ”という鈍い音が毎回するようになり10分程度で治ります。歯科医院へ行きマウスピースを作ってもらい3か月経ちますが、朝起きた時の症状は変わりません。

 整体へ行き、マッサージや鍼をやってもらいましたが効果は見られません。どこへ行ったらいいのでしょうか?

A: 起床時に口が開かなくなると言うことは、寝ている時に噛みしめや歯ぎしりがある可能性が高いですね。おそらくは寝ている時の噛みしめや歯ぎしりにより、顎関節に負担がかかり、顎関節の中の関節円板という軟骨様の組織がズレて引っかかってしまい、口が開かなくなっていると思います。症状がひどい人の場合は、そのまま口が開かなくなってしまうのですが、おそらく症状が軽度なのでズレが戻りやすくなっているのでしょう。ただ、関節円板のズレは、最近では顎の症状がない人でも50%以上はズレていると言われていて、ズレていること自体は問題がないのですが、今回のように口が開かなくなり、痛みもあると言うことであれば治療が必要です。

 噛みしめや歯ぎしりは、以前はかみ合わせが原因と言われていた時期もありますが、最近では、自律神経などが関係して筋肉の緊張が生じて、噛みしめや歯ぎしりが起こると言われています。特に眠りの深いところから浅いところに変化するときに強くなると言われています。原因は、ストレス、性格、遺伝、飲酒、喫煙、薬や病気の副作用などが言われていますが、個人差が大きいため詳しくはわかっていません。ですから、根本的な治療法はなく、自己暗示法や寝る前に筋の緊張がないようにリラックスすること、最近では昼間、無意識にかみしめる癖をなくせば、睡眠時の噛みしめや歯ぎしりも減るということが言われています。また、人によっては枕が高い(噛みしめやすくなる)こと、うつぶせ、いつも片側を下にして寝ることなどが関係していることもあり、これらに注意することで朝の症状が改善することもあります。また、ボツリヌス療法といって顎の筋肉に注射することで筋肉の緊張を弱める治療(当院で治療可能)や漢方が効くケース(当院で治療可能)もあります。

 一般的には、マウスピース様の装置を寝ている時に装着することで、噛みしめや歯ぎしりから関節が保護され、症状が軽減する場合が多いのですが、今回の質問のように、装置を装着しても改善しない、悪化するケースがあります。通常、このマウスピース様の装置は、噛む面を平らに作りますが、人によっては平らにしたことにより顎が後ろに下がってしまい、かえって顎の関節が圧迫され、症状が改善しないと言うことになります。このような場合は、装置に工夫をして顎が後ろに下がらないようにすることで、起床時の症状が改善する場合が多いです(当院で治療可能)。ただこのような効果を出す装置の作り方は難しく、うまく調整しないとかえって症状が悪化する場合もあるので一般の歯科医院では対応していません。というかこのようなことを考えたこともない歯科医師がほとんどでしょう。

 顎関節症は、基本的には顎関節や筋肉(咀嚼筋)の問題なので、整体などで対応ができるケースもありますが、今回のように、睡眠時の力のコントロールが必要な場合は歯科でないと対応は難しいかと思います。ただ歯科でも顎関節症を治療できる歯科医師は少ないので、日本顎関節学会HPに載っている専門医に相談されると良いかと思います。

 

 医療法人社団グリーンデンタルクリニックでは、顎関節症を専門的に治療しています。症状、治療に対する相談は、グリーンデンタルクリニックHPのお問い合わせより無料で行っています。ただ診察、治療に関しては、保険外治療となっておりますので、詳しくはメール等でお問い合わせください。

Q&A (5) 顎がカクカクしたので、口腔外科に行きましたが治りません。

Q: 最近、右の顎関節がカクカク鳴り始め、次第に食べ物を噛んでいるとき右で噛むようにすると左の関節が引っかかり右で噛みにくくなりました。近くの口腔外科に行くと、右に顔が歪んでいるとの事で、小さなマウスピースを作ってくれ、左上の歯に付けるよう言われました。しかし、マウスピースを付けたら右顎のこめかみと耳の間の骨の辺りが外れて、骨がうまくはまってないような、そんな違和感になったので付けるのをやめました。後日、その旨を先生に伝えたところ、右に顎が行き過ぎていて口を開ける時右に開くとの事で、歯を4本削られました。けれど、余計に右顎の骨に上記のような違和感が出てきてしまって、毎日顎が気持ち悪くて落ち着きません。うまく骨がハマるまで口をパクパクしちゃっている状態です。歯を削っただけで左に顎がズレる、もしくは左に口が開くようにする事は出来るのでしょうか?顎関節症の方はみんなこのような気持ち悪い違和感を抱えてるんでしょうか?


A: 顎関節症は、基本的には顎の関節と筋肉(咀嚼筋)の問題です。最近かみ合わせを治したわけでもないのに、顎がカクカクするのは、おそらく寝ている時や仕事中などに噛みしめていたりして、顎に負担がかかり、顎の中の関節円板というコラーゲンの塊がズレ、それが次第に引っかかりが強くなってきたのではないかと思います。ですから、引っかかりが違和感になり、上手く骨がはハマるまでパクパクするような状態となっていると思います。意味がわからないようなことではありません。このような状況でミニスプリントや咬合調整は、行わないのが最近の世界的な考え方です。特に歯を削るとかえって顎が不安定になるのでやめた方が良いと思います。
顎がズレるのを治すには運動療法などで顎の動きをよくすることが必要です。顎関節症は歯科で診るのが通常ですが、顎関節症の考え方は、ここ数年で大きく変わったため、現在、運動療法など、新しい治療法を残念ながらどこでも受けられるわけではありません。このブログにも詳しく書きましたが、たとえば日本顎関節学会のHPに専門医が載っていますので、それを参考に問い合わせてみてはいかがでしょうか?