顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

咬合論

中沢勝宏の誰にでもわかる咬合論

中沢勝宏の誰にでもわかる咬合論

中沢勝宏先生が先日咬合論の本をデンタルダイヤモンド社から出版されました。
デンタルダイヤモンド社から書評を頼まれました。
デンタルダイヤモンド4月号に載る予定です。
「中沢勝宏の誰にでもわかる咬合論」
 書評                 
           医療法人社団グリーンデンタルクリニック
                           島田淳

 先日、歯科治療後より咬合の違和感と顔面痛が生じたと訴える患者さんが来院した。治療した歯科医院からは、「うちは審美歯科なので咬合は診ない」と言われたとのことであった。患者さんの話からだけで語るのはフェアではない。しかし、いつからこんな時代になってしまったのだろう。
咬合を考えない歯科医師はいない。咬合を理解することが、歯科治療を行うにための絶対必要条件であることに異論を唱える歯科医は少ないであろう。その一方で咬合は難しい、わからないという歯科医も実は多い。ここ10年ほどの間に、咬合が軽視される傾向となった。これは、EBMの概念の広まりとともに、咬合と顎関節症の関連に対して否定的な意見が多くみられるようになり、おそらくは、咬合は難しい、わからないと考えていた歯科医にとって、避けて通っていいものとして認識されてしまったのではないだろうか?
 Okeson先生は「咬合は、歯科の基礎であり、TMDにおける咬合の役割についての議論は、歯学における咬合の重要性とは無関係である。」と述べている。これを裏付けるように、近年、咬合関連を取り扱う本が多くみられるようになり、再び歯科界は咬合の重要性について考えだしたように思われる。
 今回、中沢勝宏先生が「中沢勝宏の誰にでもわかる咬合論」を出版された。中沢先生は、30年以上、臨床医として、変化し続ける顎関節症治療の常に最先端にいる。
前書「顎関節症、治療するときしないとき」では、口腔顔面痛、心身医学的問題を含めた全般的な考え方について書かれた。今回出版されたのは、「異彩を放つ咬合論」と書かれてはあるが、ある意味、迷走する咬合論に一石を投じるであろう、本当に純粋な咬合論である。
本書は咬合について顎関節を保護する、顎関節に起こりうる変化、さらには本来のあるべき状態に顎関節を戻すことについて、本当に美しくリアルなスライド、またCT画像を多数織り交ぜ、丁寧に解剖学的に見た咬合論を展開している。咬合は顎関節の状態で変わる。よく考えれば当たり前のことである。しかしこれを当たり前と思い咬合を捉えているだろうか?下顎運動を大ざっぱに決定するのは筋肉であり、微妙に決定するのは関節構造である。また、咬合への影響について下顎頭、関節円板、関節包コンプレックスをスポンジに例えた話は本当にわかりやすい。解剖学的な裏付けをもとに固定されてしまった関節をリリースし正規の位置に下顎を誘導する中沢式マニピュレーション。読者は本当に目からうろこが取れた状態に遭遇するのではないだろうか?
患者さんから喜ばれる。これが歯科医をしていてのやりがいと感じる先生は多いであろう。筆者は中沢式マニピュレーションを実践し、患者さんから感謝されることが増えた。また咬合違和感を主訴に数年悩んでいた症例が落ち着く経験をした。
 咬合は難しい、わからないと考えている先生、あるいは、咬合違和感を含めた難症例を抱えている先生方は、是非一度本書に目を通すとともに、中沢式マニピュレーションを試していただきたい。咬合についての新しい発見があるであろう。
難しく考えず、本質をつかむ事が大切であると教えられた気がする。