顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

これで顎関節症がわかる!16

3)顎を守るセルフケア(日常生活を見直す)
  顎関節症は、ある意味、生活習慣病です。セルフケアを行うことでほとんどの顎関節症は治ると言われています。セルフケアには、顎を守るためのセルフケアと積極的に顎を治すためのセルフケアがあります。
 まず顎を守るためのセルフケアを行うために、顎に負担がかかる事柄とどうやって守るかについてお話ししたいと思います。
(1)歯ぎしり
 顎関節症は大きく分けると、朝症状が強い人、夕方から夜にかけて症状が強い人に分けられます。
 朝に症状が強いということは、寝ているときに何か問題があるという事になると思います。一番に考えられるのは歯ぎしりです。
 歯ぎしりというと、旅行に行った時に友人が、夜寝ているときにギリギリうるさくて寝むれなかったなどという経験をお持ちの方もいると思います。あんなにうるさくて寝むれなかったのに本人はケロッとし気がついていなかったのではないでしょうか。たまに自分の歯ぎしりで目が覚めたと言う人もいますが、それはごくまれです。通常は自覚がない場合がほとんどです。
  歯ぎしりは大きく、ギリギリと音がするグライディング、音はしないがグッと噛みしめるクレンチング、カチカチと音がするタッピングの3つに分かれます。音がしてわかりやすいので、一般的には歯ぎしりというとグライディングの事を指します。また、歯ぎしりは寝ている時に起きるというイメージがありますが、起きている時の噛みしめも歯ぎしりの一種です。ただ起きているときは悪習癖に分類されるので、これについてはまた次の項目で説明いたします。睡眠時の歯ぎしりの原因について、以前は咬み合せが原因と言われていた時期もありますが、現在では自律神経系の活動の変化が起こり、脳波活動の亢進、心拍数の増大に続き、筋の活動を中心に歯ぎしりが起こることから、歯の接触は2次的に生じていると言われています。またそこには睡眠の深さが関係していて、歯ぎしりの大半が眠りの浅いノンレム睡眠、特に眠りの深いノンレム睡眠からレム睡眠に移行する睡眠状態が不安定な時に起きると言われています。つまり眠りが浅い人は歯ぎしりが出やすいという事です。またその他の原因として、ストレス、性格、遺伝、薬の副作用、飲酒、喫煙、病気の副作用など多くの項目が挙げられていますが、個人差が大きいため実際のところは良くわかってはいません。ただ歯ぎしりは、起きている時の最大かみしめ以上の力がかかるので、歯や歯肉、筋肉、顎関節に破壊的に働くと言われています。
 歯ぎしりによる持続的な筋肉への負担のため、起床時に顎の痛みが強く、時間の経過とともに痛みが消えていく場合が多いです。また顎関節の変化についても、持続的な負担の増加が、関節の中に負担をかけ、関節痛を起こしたり、関節の中の関節円板をずらしてしまうのではないかと言われています。
 ただ最近では、音がする歯ぎしり(グライディング)は、それほど顎には害がなく、問題は、音がしない歯ぎしり(クレンチング、かみしめ)であるとも言われています。
 歯ぎしりについての対応としては、結局原因が様々で良くわかっていないので、歯ぎしりを根本的に止める方法はありません。ストレス、飲酒、薬が関係しているようであれば、それにそれぞれ対応する必要があります。現在一番多く用いられている対応法としては、スプリント(ナイトガード)療法です。スプリント(ナイトガード)とは、マウスピース様の装置です。一般的には、スプリント(ナイトガード)よりはマウスピースと呼ぶ方が患者さんの理解が得やすいので、マウスピースと呼ばれることが多いですが、スポーツのマウスピースとは違います。材質には、固いものと軟らかいものがあります。軟らかいものの方が違和感は少ないようですが、軟らかいため逆に力が入りやすいためか、歯ぎしり(特に噛みしめ)がひどくなり顎の痛みが増すことがあるので注意が必要です。
 睡眠の改善や筋肉に力を弱めるために薬を使うこともありますが、薬を止めると戻ってしまうことや、薬物依存、副作用の問題があるので、良く担当医と相談してください。
 歯ぎしりの根本的な治療法はありませんが、歯ぎしりを少なくするためにいろいろな試みがなされています。
まず1つ目は、昼間の歯ぎしりを減少させる事です。昼間の歯ぎしりについては、後で述べますが、睡眠時と違い、多くは悪習癖として捉えられています。昼間の歯ぎしりを自覚し、悪習癖を改善することで昼間の歯ぎしりが減少すると睡眠時の歯ぎしりも減少するとの報告があります。次にリラキゼイションと自己暗示法です。この方法について具体的に説明いたします。まず布団に入り枕を低くし、後頭の一番出っ張ったところより首の付け根近くに枕が来るようにします。すると頭が少し上を向くので口が開きやすくなります。次にリラックスをする方法ですが、力を抜くと言うのは通常でも難しいことです。力を抜くためには、最初に力を入れることがポイントです。まず1,2秒強く噛みしめて、顎の力を抜いて歯を離して下さい。この時に呼吸も合わせて、力を入れる前に大きく吸って、力を入れる時に息を止め、脱力した時に大きく吐いてください。次に肩に思いきり力を入れて1,2秒したら力を抜いて下さい。ここでも呼吸を合わせてください。同様に胸、腹、太もも、そして最後に足の先に力を入れ、ストレスがすべてそこから出ていくようなイメージで大きく息を吐きだしながら脱力します。次に自己暗示ですが、例えば、次の朝大事な用事があって4時に起きなければいけない時に、目覚ましが鳴る前に時間通りに目が覚めることがあると思います。同じように、リラックスして眠ると言う作業はその気になれば意外にできると言われています。先ほどの作業で力を抜いた後に、呼吸に意識を傾け、吐くときに脱力するのを繰り返しながら、手足やお腹が温かくなってくるのを感じてください。また吐くときにリラックスすること、歯を噛みしめないこと等を自分に言い聞かせます。そして、次の朝、すっきりさわやかに間が覚める自分の姿をイメージしながら眠りに入ってください。これが自己暗示療法です。その他にも、ストレスマネージメントや、寝る前に飲酒、喫煙、あるいは読書をしないなどに気をつけることも必要です。
ご質問などありましたらこちらからからお願いします。

これで顎関節症がわかる!15

2)まず痛み出た時にすぐに自分できる事
 顎関節症の痛みは、ほとんどが筋骨格系の運動障害による痛みです。これは虚血性の痛み、すなわち血の流れが悪くなっての痛みです。ですから血の流れを良くして、痛みを起こす物質を洗い流すことです。
 急に強く痛んだ時には、まず安静です。ただ何もしないで痛む場合には冷やすことです。
動かさなくてもズキズキ痛む時は冷やしましょう。ただあまり冷やしすぎると血行障害が進み、治りが悪くなるので、タオルを濡らして5〜10分程度冷やしてください。
 動かした時だけ痛いようでしたら、濡れたタオルを温めたり、ホットパットを電子レンジで温めたりして痛い所を温めましょう。
 お湯で温めたタオルを痛い所に当ててください。痛む筋肉は皮膚から少し深い所にあるので、なかなか温度が浸透しづらいのですが、乾いたものよりも濡れた物を長く当てておいた方が温まりやすいようです。
  痛みが強いようであれば、市販の痛み止めを飲み早めに病院へ行くようにしましょう。 

ご質問などありましたらこちらからからお願いします。

これで顎関節症が分かる!14

4.自分でできることは?
1)症状の確認と様子を見ていい場合と病院に行った方がいい場合
 症状が出た時の基本的な考え方は、前章でも書きましたが、さっきまで何ともなかったのに急に痛くなり、原因が分からないとなると不安になると思いますが、顎関節症は致命的な病気ではないので焦らないことです。まず落ち着いて、どんな症状か確認してみましょう。何もしなくても痛い?口を開けると痛い?口が開かない?かみしめると痛い?顎が鳴る?
 どうでしょう?痛みがある場合は、まず安静にすることです。何もしないでも痛い場合、顎を動かすと痛みが増すかどうか確認してみましょう。動かしても痛みが増さないとすると顎関節症ではない可能性があります。早めに病院へ行かれることをお勧めします。また腫れた感じがあるようでしたらやはり早めに病院へ行きましょう。顎関節症感染症ではないので腫れることはありません。
何もしなければ痛くないとすれば、少し口を開けてみましょう。口は開きますか?痛みはどうでしょう?まずは安静にすることです。あまり顎を動かさず、食べるのも柔らかいものを食べてなるべく顎に負担が掛からない様にしてください。
痛みが強い場合は、湿布やマッサージが効果的な場合があります。また生活習慣に気をつけることも必要です。1週間くらい様子をみて症状が徐々に軽くなる、あるいは治まってしまえばもう少し様子を見ても良いかと思います。
1週間たっても良くならない場合は、歯科を受診してください。ただ顎関節症は、得意な先生とそうでない先生がありますので、日本顎関節学会のHPなどを参考にしてください。

これで顎関節症がわかる!13

 昨日まで日本補綴歯科学会での発表があり、また6月3日には医科歯科大で講演を頼まれていて、9日には神奈川歯科大でもセミナーを頼まれ、さらに歯科雑誌の特集に原稿を頼まれた締め切りが迫っているため、更新が出来ず申し訳ありません。

3)生活習慣と悪習癖
 顎関節症の原因は多因子であるとの話や原因がはっきりしないとの話をしました。現在では日常生活での習慣や悪習癖が、しらずしらずのうちに顎に負担をかけていて、身体の許容範囲を超えてしまい、顎関節症の症状として現れる場合が多いと言われています。急に思い当たることはないかもしれませんが、生活習慣や悪習癖を見直すことで症状が改善する、あるいは再発が防げる場合が多いので、これを機会にご自身の生活習慣や悪習癖を見直してみましょう。具体的な事柄については次章からお話ししていきます。
ご質問などありましたらこちらからからお願いします。