顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

日本顎関節学会からの依頼で顎関節症の運動療法についての論文を顎関節学会誌に寄稿しました。

 顎関節症は基本的に腰や肩、膝などと同じ運動器の疾患です。ですので腰痛や肩こり、膝関節痛と同じように運動療法が有効であるというのが世界的な考え方です。ただ顎関節は頭部における唯一の滑膜性関節であり,左右の下顎頭が共同で動き,回転と滑走運動が可能な多軸関節であり、また,歯列が運動を誘導し,停止させることから,顎関節の個々の構成要素と,上下の歯列および歯の咬合接触状態は極めて密接な関係があるなど,他の関節にない特徴を有しています。そして開閉口時の顎の動きを決定しているのは,下顎頭を包んでいる関節円板と,関節包であり,関節の中の形態変化により顎の運動も変化します。特に関節円板の転位,変形の状態により開閉口運動は大きな影響を受け、そして顎関節の形態変化は,咬み合わせを変化させることがあります。ですので、顎関節症では腰、肩、膝などの運動療法を参考にしながらも、顎関節症独自の運動療法を確立しなければなりません。

整形外科では、通常、顎関節症を扱っていません。これは顎関節が他の関節と違い、複雑な動きをするとともに、咬み合わせが関係しているためです。ただ逆に言えば咬み合わせを診るためには、顎関節症を知らなければなりません。

今回の論文では、顎関節症の中でも、関節円板の転位が関係し、開口障害や痛み等を起こす顎関節円板障害と変形性顎関節症の運動療法の考え方について、昨年の第33回日本顎関節学会のシンポジウム1「顎関節円板障害、変形性顎関節症の運動療法に対する運動療法」での講演をもとにまとめました。これまでも顎関節症の運動療法についての研究はありましたが、おそらくこのような形で顎関節症の運動療法の考え方が論文になったのは初めてと思います。

顎関節学会雑誌最新号(第32巻3号)に掲載されていますが、最新号は会員誌か閲覧できませんので、HPにPDFを載せておきますので、参考にしていただければ幸いです。

質問などありましたら、お問い合わせからお願いいたします。

 

 

 

 

 

上下の歯を合わせない!?

 1日24時間で、上下の歯が接触しているのは、大体20分程度と言われています。これは口を開ける筋肉と閉じる筋肉があるので、上下の歯が接触していると言うことは、口を閉じる筋肉がずっと緊張して、顎を持ち上げている事になります。これでは顎をが疲れてしまいますよね。実際の調査した時に、上下の歯が接触しているかどうか調べるのは難しいので、筋肉の緊張を計測しているのですが、1960年代に、世界的に同じような研究が行われ、大体、どの調査も20分程度でした。そこで、長く時間上下の歯を合わせるのは悪習癖であると言う考え方が出てきました。それがTCH(tooth contacting habit),上下歯列接触癖と言います。今、顎関節症について調べると、あるいは歯科医院へ行って、顎が痛い、口が開かないと言うと、上下の歯を合わせないと言う話が出てきます。この事を知り、歯を離す事を気をつけるだけで、顎の痛みが取れたり、口が開くようになる人は多いと思います。でも、その一方で、そんな事言ったって、そんなに簡単にできない。気をつけてるけど良くならないと言う人も少なくないようです。これを読まれている「あなた」も頷いるのではないですか?そう、私のところに、顎の調子が良くならないと相談に来られる人は、そんな人が多いのです。
 筋肉の緊張が慢性化している人は、単純に歯を離すだけでは良くなりません。筋肉は負担を軽くするだけでは、緊張は取れないのです。では、どうしたら良いのでしょうか?マッサージ?それも一つですね。筋肉は緊張すると血流が悪くなり硬くなります。温めたり、マッサージも効果はありますが、緊張している筋肉に一番必要なのは、伸ばす事。ストレッチです。顎は、肩や膝の関節と違い、大きく口を開けると、顎の骨は、顎の関節の中から前に出ます。ですから、口を開ける筋肉のストレッチは、顎の骨が前に出るように口を開けなければなりません。具体的には、下の歯が上の歯より前に出るように動かして、その位置から大きく開けます。どうでしょう?少し顎が伸びた感じになりませんか?通常に生活しているなかでは、ここまで顎を動かす事はありません。顎が伸びるまで動かさないと、次第に筋肉も関節も硬くなってきます。そうして、顎が動きづらくなり、くいしばりやすくなり、筋肉や、関節が緊張すると言う悪循環を作っていきます。ですから、上下の歯を合わせないと言う呪文に捉われず、そんな事は気にしないで、顎のストレッチをやりましょう。気がついた時に何回もやると良いのですが、少なくとも、お風呂に入って、筋肉や関節が温まり動きやすくなった時にやると効果的です。是非、試してみてください!

新型コロナと顎関節症

 緊急事態宣言後、ここに来て感染者が増大し不安な日々を送られている方が多いと思います。私の診療所でも、感染対策をより徹底し対応しています。
 現在の状況では、まだまだマスクは必要ですね。そんな中で、マスク着用と顎関節症の関係について考えてみました。
 顎関節症の原因の一つに、上下の歯を合わせる時間が長い事が挙げられています。1日24時間の中で、上下の歯が合わさっている時間をご存知ですか?
 最近では、知ってる人がだいぶ増えましたが、平均すると20分程度なんです。そんな事ないよ。私はいつも接触していると言う方もたまにいらっしゃ居ますが、これは、1960年代に世界的に同じような研究がなされ、どの国でも、だいたい20分ぐらいでした。
 口を開け閉めするのに、口を開ける筋肉と口を閉じる筋肉があるのですが、上下の歯を合わせると言う事は、口を閉じる筋肉が、ずっと顎を持ち上げている事になるので、筋肉は疲れてしまうし、歯も刺激を受けすぎるので、知覚過敏などになりやすいと言われています。当然、個人差はあるので、上下の歯が合わさっている時間が長くても、何も症状は出ない人はいますが、そのような人でも、長い間に筋肉や歯に疲れが溜まってしまい、何かのきっかけで顎関節症や知覚過敏が出る事があり、一度症状が出てしまうと、そのような下地があるので治りづらいようです。
 そうならないためには、普段から、上下の歯が合わさらないようにしておく事なのですが、今回の新型コロナ騒ぎで、マスクを着用する時間が増えて、顎が固定されるようになり、上下の歯が合わさっている時間が長くなる事で、顎関節症の患者さんが増えているようです。マスクをしていても、上下の歯が合わさらない、顎に力が入らないよう気をつける事が大切です。
 ただ、実際は上下の歯を合わせないようにしてるのは難しいですよね。歯科医師に、歯を合わせないように指導されたけど、それができれば苦労しないという方がいらっしゃいました。確かにそれが出来て、症状が改善する人は軽症ですので、まずは気をつけてみてください。

 それが出来ない方には、そんな時はどうすれば良いか、次回、お教えしますね。

 

 

 

歯科顎関節症専門医のつぶやき

 前回更新してから、早いもので2年も経ってしまいました。前回まで連載したものをまとめて「歯医者に聞きたい 顎関節症がわかる本」として口腔保険協会というところから上梓しましたが、おかげさまで反響は大きく、取材等の連絡があり、雑誌に記事が掲載されたり、本を見て問い合わせくださる方や、実際に本を持参して来院される方もいらっしゃいます。私としては、本を上梓したことで、ひとまず顎関節症は区切りがついたかと思っていたのですが、問い合わせいただいたり、来院される方からお話を伺うと、まだまだ顎関節症の正しい考え方が、世間一般だけでなく歯科界でも理解されていないことを痛感し、「歯科顎関節症専門医のつぶやき」というタイトルでリニューアルすることにしました。

 「歯科顎関節症専門医?」聞き慣れない言葉ですよね。日本顎関節学会という、主に顎関節症を扱う歯科の学会では、試験や症例報告を行い専門医を認定しています。顎関節学会のHPに掲載されています。http://kokuhoken.net/jstmj/certification/list.html

見てわかるように、日本に350人ほどしかいません。専門医がいない県もあります。顎関節学会では、全ての県に専門医を作るよう努力していますが、なかなか希望する歯科医師がいないのが現状です。最も1つの県に1人しか専門医がいないのでは、とても足りませんが・・・・。

 なぜ顎関節症に力を入れる歯科医師が少ないのでしょうか?顎関節症は、通常の歯科疾患である、う蝕や歯周病と違い、目で見て原因がわかりづらい、見えないところを診る技術が必要。そのため、大学の授業などでも、しっかりとした教育が行われていません。また、現在、顎関節症の検査は、医療保険には入っていません。また治療についても、ほとんどカバーされていません。顎関節症を診るのは大変なのに、保険点数がない。そのため顎関節症を診る歯科医師が少ないという現状となってしまっています。現在、私は顎関節学会の専門医というだけでなく、理事として、顎関節症の正しい考え方を広めるべく、歯科医向けに「顎関節症治療の指針2018」http://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2018.pdfを、顎関節学会の委員として、大学の先生たちと作りHPに掲載しています。また、保険医療推進委員会委員長として、医療保険における顎関節症関連の項目を増やすべく、厚労省へ行くこともあります。ただ、顎関節症は、症状は同じでも、その原因や対応法は個人差が大きいので、実際の臨床では、臨機応変な対応が求められています。しかしその一方で、顎関節症のほとんどは、生活習慣病のような部分が多いので、症状が出始めたときに、適切な対応ができれば、そんなにひどくならず治る場合がほとんどですので、患者さん向けに「歯医者に聞きたい 顎関節症がわかる本」を上梓しました。ただそれでも、個々の事例を網羅することはできないので、今回から「歯科顎関節症専門医のつぶやき」として、顎関節症に悩む人に有益な情報をお届けできればと考えております。

 昨日まで、日本顎関節学会がWEB開催されていて、私もシンポジウムのシンポジスト、座長、個人での口演などで係わっておりました。ちなみに来年

34回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会では、副大会長として学会運営に係わることになっており、これもプログラム制作などで忙しのですが、とりあえず直近の学会は終わり一段落つきましたので、顎関節症専門医として気がついたことを「つぶやき」として掲載していく予定です。

 ご質問なども歓迎いたしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ご質問はこちらからどうぞ → グリーンデンタルクリニックHPお問い合わせ