顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

これで顎関節症がわかる!2

1.顎関節症の正体
 顎関節症の正体。
このように書くとすごく怖いものが出てくる気がしませんか?
顎関節症は本当に正体不明で、過去には、いろんな原因が犯人とされ、それに伴い様々な治療が行われてきました。しかしある人には効いても、ある人には効かない。効かないだけならまだしも、逆にひどく悪化することもありました。特に咬み合わせに手をつけたり、顎の手術をすることで、良くなる場合もありましたが、逆に長く苦しむことになった患者さんがいたのも事実です。こう考えると本当に怖いものがいる気がしてきますね。これは日本だけの問題ではなく世界的にも同様な状況でありました。そのような状況を踏まえ2012年に、アメリカの最も権威ある歯科学会である米国歯科研究学会から顎関節症の診断と治療に関する世界的な基本声明が出されました。
 そこには、顎関節症の正体を、顎関節、咀嚼筋と関連諸組織を含む筋骨格性の疾患の一群としています。
 そうです。顎関節症の正体は筋肉と顎関節の疾患だったのですね。では、全身的な症状を示すことがあると言われているのはなぜでしょうか?これについても記載があります。顎関節症は通常急性の痛みや慢性の痛みを伴っていて、患者は同時に他の痛みを伴う疾患にかかっていることも多い。つまり顎関節症が原因で他の症状が出ているという事でなく、他の疾患が共存しているということです。ただ顎関節症の症状が強くなると、一緒に他の症状が強くなったり、顎関節症が治まると一緒に収まることもあります。これは別の原因が隠れている場合もありますし、あるいは逆に他の疾患の影響で顎関節症の症状もでていることがあるので、顎以外に症状がある場合は、担当医とよく相談し、顎関節症の治療と平行して他の科で診てもらう必要があります。
 また、実は顎関節症は、心身症の典型例と言われています。心身症という言葉を聞かれた方も多いかと思いますが、心身症はどういう疾患かご存知でしょうか?心身症は、心身医科学会において「心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与。器質的ないし機能的障害がみとめられる病態をいう。神経症うつ病など他の精神障害にともなう身体症状は除外する。」と定義されています。そうです。顎関節症の症状が強くなったり弱くなったりする、あるいは治りが悪いことにはストレスも関係しているのです。
 ですから、顎関節症の診断をするに当たっては、患者さんから病気の経過や、日常での症状の変化やストレスについてお聞きしたり、痛む筋肉や関節を触って症状を確認することが重要であり、見えない部分についてはレントゲンやMRIなどが必要になることもあります。
 もし顎関節症の症状が出た時に心得ておく必要があるのは、顎関節症はガンの様などんどん悪くなる病気ではなく、自然に良くなることも多いので焦らないことです。ですから日本顎関節学会では、顎関節症の治療を始める時に最初から歯を削ったり、顎の手術をしたりという後戻りできない治療ではなく、後戻りのできる治療から始めるよう警告しています。
 では次回から、顎関節症の正体の中心となる筋骨格性の疾患、心身症とは何か考えてみましょう!

図に示しますように、顎関節症の患者さんの年齢分布をみると20代、30代の女性に多く、年齢が行くにしたがって減少しているのがわかります。顎関節症は、悪性疾患とちがって年齢とともに悪化していく病気ではないので焦らないでくださいね!


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