顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

これで顎関節症がわかる!21

申し訳ありません。夏休みというのもあって間が空いてしまいました。
ご自分でできる積極的に顎を治すための方法について解説していきます。

①マッサージ
  マッサージと聞くとどんな感じでしょうか?え、マッサージ!?と思われた方もいるかと思います。顎関節症の筋肉の痛みは、血の流れが悪くて痛みが起きている場合がほとんどですので、温めることが効果があるのは、以前お話しした通りです。ただ温めるだけでは、なかなか皮膚の中の深い所の筋肉まで熱が届きません。また硬結といって、筋肉の中で筋肉が固まりしこりのようなものができるのですが、これは指などで圧迫してほぐしてやることが効果的です。たとえば、頬に手を当て、少し噛みしめると筋肉が盛り上がるのがわかると思います。力を抜いて膨らんだ辺りを注意深く、指で押しながら探って行くと硬い塊を触ることがあり、おそらくこれを押すと痛いと思います。これが硬結で、欧米ではトリガーポイントと言われています。トリガーとは引き金ということです。つまり痛みの引き金になるポイントという事です。これは、たまに歯の痛みや頭痛などと関連していて、このトリガーポイントを押すと、歯が痛く感じたり、頭痛や肩、腕など別な場所が痛く感じたりします。なかなか治らない歯の痛みは、このトリガーポイントが原因だったりすることもあります。これは指で押してほぐしていくと柔らかくなっていきます。
 なかなかご自身で、この硬結、トリガーポイントを探し当てるのは難しいと思いますが、とりあえず痛い所を、指で押しながらマッサージしてみてください。少し痛いぐらいがよいと思いますし、凝っているぐらいでしたら痛気持ち良く感じるかもしれませんbvg。お風呂で温まった時に行ったり、タオルをお湯で温めて痛い所にあてて温めてからマッサージを行うとより効果的です。
 噛みしめて膨らむ所(咬筋)や側頭部(側頭筋)、あるいは頸や肩などもやってみるといいかと思います。
 下に示す図は、昨年、顎関節症の治療で有名な先生方と一緒に医歯薬出版から出版した「顎関節症運動療法ハンドブック」から引用した図です。
 なかなか歯科の先生方は、う蝕や歯周病を治すことは学んでも、顎関節症の治療を学ぶ機会はありません。そこで、多くの先生方が顎関節症の治療を出来るように、ハンドブックを作りました。ところが意外なことに、アマゾンなどで患者さんが購入し読んでいるようなんです。私の所に来院された患者さんで「いろいろ読んだけどこれが一番わかりやすかった」と言っておられる方がいたり、他先生に聞くと、患者さんが受付で買っていかれる場合も多いらしいです。
 この本は、顎関節症はどんなものか、現在世界的にはどんな考え方がされているのか、実際受診するとどんな診察や検査をするのかなど、あまり顎関節症を治療されてない先生方向けに書きましたので患者さんにもわかりやすいようです。
 でも患者さん向けの本があっても良いですよね。実は現在出版社の人と計画していますので、具体的に決まりましたら報告させていただきたいと思います。


は、顎の筋肉の痛みに対して、痛みがある部分に自らの手指を使い、痛みのない範囲で行います。入浴時に温めて行うと効果的です。

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4)積極的に顎を治すためのセルフケア(リハビリテーション
  顎関節症では、患者さん自身が行うセルフケアが大変有効で重要であるのはここまでお話ししてきたとおりです。
 日常生活で気をつけていただくことの他に、症状を改善するために行っていただきたいことがあります。顎関節症の痛みは、筋骨格系の運動障害とのお話を最初にしました。以前は痛みがあれば安静にすることが重要であるとされていました。当然痛みがかなり強ければ、安静にすることです。これについては前項を参考にしてください。
 何もしないでの痛みが無くなり口を開けた時や咬んだ時の痛みだけになったら顎を積極的に治すためのセルフケアを行います。顎の痛みは、筋肉や関節の血行障害が原因ですので、積極的に動かすことです。つまり、運動機能の改善が痛みの改善につながります。ここ注意していただきたいのは、顎の動く範囲が広がり、真っ直ぐに大きく開けられるようになってくると、それに伴って痛みが取れてくる。わかりやすく言うと、痛いのを我慢して動かしていると、そのうちに痛みが取れてくるという事です。つまり動くようになると今まで使っていなかったところが動くようになるので、痛みが強くなったり、関節が動くことで、開けた時や閉じる時に顎が鳴ることがあります(カクンやザラザラなど)。最初は驚くかもしれませんが、これは動いているという事なので気にしないでください。
 実際、なかなか痛みが取れず来院する患者さんにお話を聞くと、怖くて動かせない、あるいは診てくれた先生から安静にするように言われたというケースが多いです。詳しくは治療の所でお話ししますが、そんな時にゆっくりと顎を伸ばしてあげるとすぐに楽になることも多く、患者さんは驚かれます。
 ただやみくもに動かすと却って逆効果となることもありますので次からのやり方の説明をよく参考にしてください。
 顎を積極的に治すセルフケアには、筋肉に対するのもの、関節の動く範囲を広げるもの、ストレッチがあります。
 次回からこれらについて解説していきます。

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これで顎関節症がわかる!19

③偏咀嚼
  手に利き腕があるように、食物を咀嚼するのにも利き咬みがあると言われています。顎関節症の患者さんに聞くと良く使う方に症状が出ている場合が多いようです。ただ片方の顎の動きが悪くなると、動きが悪い側の方が痛くても咬みやすい。つまり悪くない側で咀嚼するには、悪い側をより動かすことになる、あるいは動かないため悪い方で咬むことになるのでより悪くなるようです。普段はなるべく均等に咬むようにするといいかと思います。

④姿勢
 習慣になっている姿勢を見直してみましょう。
 今このブログをを読んでいる姿勢はどんな姿勢ですか?寝転んでいたり、頬杖をついていたりしませんか?背中を丸め、首を突き出して本を読んだりパソコンをしたり、テレビを見たりしていませんか?常に肩に力が入っていませんか?あるいは、片方だけで重いものを持つなどもバランスが悪くなりますね。普段の姿勢が、顎だけでなく、首や肩さらには腰にも負担をかけている場合が多いようです。頭痛と肩こりの原因として座っているときに骨盤が後傾して、頭が前に垂れていることが言われています。頭が首の真上、首が背骨の真上にくるのが良い姿勢の基本と言われています。また、長時間同じ姿勢でいるのは、筋肉や関節の血液の循環障害が起こりますので、リラックスして体を動かす習慣を作るようにすると良いと思います。一生懸命になっているときほど、息抜きを忘れないようにしましょう。

⑤楽器、スポーツ
 管楽器の練習を過度にすることで、顎の関節や筋肉に負担がかかり顎関節症になりやすいと言われています。練習時には適度な休みをとること、症状が強いようならしばらく休むことが必要でしょう。
 またスポーツにおいて、最近歯や顎の保護のためにマウスガードが義務化されている種目も増えています。たしかにぶつかり合うことや過度に噛みしめることで顎関節症となる場合があります。それを防ぐためにマウスガードをすることは必要ですが、そこで問題になるのは、適切な咬み合せや形態で作られていないマウスガードをしていることで逆に、歯の破折、骨折や顎関節症になるケースがみられることです。特にスキューバダイビングでは合わないレグレーターを長時間噛みしめていることで口が開かなくなる症例が多くスキューバダイビングシンドロームと言われています。マウスガードが必要な場合、スポーツ歯科という分野の勉強をしている歯科医に相談してください。
 スポーツを行う際、力を入れる時にかみしめているかどうかは議論されているところですが、少なくとも顎をズラして噛みしめていると顎には破壊的な力がかかることになるので注意が必要です。

⑥環境
 普段生活している環境も顎関節症の原因となることがあります。寒くなると噛みしめることや体をこわばらせる事が多くなり、血流が悪くなるため筋肉や関節が硬くなり、顎関節症の症状が出現しやすくなります。また最近では真夏になると、どこへ行っても冷房が強いため、うっかり薄着で出歩くと風邪を引いてしまうことがあると思います。職場の席が冷房機の前で、そこで寒い思いをしていることが実は顎関節症の原因であったなど笑えない話も実在しますので、周りの環境についても考えてみてください。

⑦ストレス
 顎関節症が典型的な心身症に含まれるという事をお話ししましたが、ストレスにより、噛みしめたりすることが多くなって筋肉や関節に負担が掛かることや、痛みに敏感になることで顎関節症状が悪化する事があります。
 ストレス自体は刺激に対する反応であり、ストレスがないと人間は生きていけないと言われています。問題はその大きさと受け止める側の状態です。たとえば噛みしめなどで顎に対するストレスが掛かりすぎれば顎が痛くなる。顎に対する負担をどうするか考えるように、日常生活で問題になっていることを整理してみて、それを解決していくことも必要ですし、あるいは自分ではどうしようもない問題に対しては気分を変える事や、相談できる相手を普段から見つけておくこと、場合によっては心療内科やカウンセラーなどの専門家を頼るのも良いかと思います。
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これで顎関節症がわかる!18

②寝る姿勢と舌の位置、呼吸法
 毎日のことですから寝る姿勢や枕の高さも顎関節症と関係していると言われています。一番良くないのは、うつぶせ寝です。仰向けで寝るのが顎にとっては一番負担が掛からないのですが、数年前仰向けに寝ることで、舌根沈下により気道がふさがれ、いびき、睡眠時無呼吸症候群、酸素不足による脳卒中などの弊害が生じるということが話題になりました。確かにうつ伏せや横を向いて寝ると舌は後ろに下がらないために、これらの症状は改善されることがあるようです。また、腰が悪い等、仰向けで寝られない場合もあると思います。ただ、うつ伏せや、横を向いて寝ることで顎が常に押し付けられることで負担が掛かってしまう。実際、顎関節症の患者さんに寝る姿勢を聞くと、症状のある方を下にして寝ているケースが見られます。また枕が高いと噛みしめやすくなるので良くないようです。
  最近、呼吸法について取り上げられることが多いようですが、口呼吸の弊害として口の中が乾き免疫力が落ちると言われています。口呼吸だと口を開いていることが多いため、舌の筋肉や口唇の回りの筋肉が衰えることで舌が後ろに下がり、気道がふさがれ、いびきや睡眠が浅くなることなど指摘されています。睡眠が浅くなると歯ぎしりも強くなる可能性もありそうですね。
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