顎関節症専門医のつぶやき(グリデン日記)

歯科医院(通称グリデン)からの顎関節症についての情報です。

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4)積極的に顎を治すためのセルフケア(リハビリテーション
  顎関節症では、患者さん自身が行うセルフケアが大変有効で重要であるのはここまでお話ししてきたとおりです。
 日常生活で気をつけていただくことの他に、症状を改善するために行っていただきたいことがあります。顎関節症の痛みは、筋骨格系の運動障害とのお話を最初にしました。以前は痛みがあれば安静にすることが重要であるとされていました。当然痛みがかなり強ければ、安静にすることです。これについては前項を参考にしてください。
 何もしないでの痛みが無くなり口を開けた時や咬んだ時の痛みだけになったら顎を積極的に治すためのセルフケアを行います。顎の痛みは、筋肉や関節の血行障害が原因ですので、積極的に動かすことです。つまり、運動機能の改善が痛みの改善につながります。ここ注意していただきたいのは、顎の動く範囲が広がり、真っ直ぐに大きく開けられるようになってくると、それに伴って痛みが取れてくる。わかりやすく言うと、痛いのを我慢して動かしていると、そのうちに痛みが取れてくるという事です。つまり動くようになると今まで使っていなかったところが動くようになるので、痛みが強くなったり、関節が動くことで、開けた時や閉じる時に顎が鳴ることがあります(カクンやザラザラなど)。最初は驚くかもしれませんが、これは動いているという事なので気にしないでください。
 実際、なかなか痛みが取れず来院する患者さんにお話を聞くと、怖くて動かせない、あるいは診てくれた先生から安静にするように言われたというケースが多いです。詳しくは治療の所でお話ししますが、そんな時にゆっくりと顎を伸ばしてあげるとすぐに楽になることも多く、患者さんは驚かれます。
 ただやみくもに動かすと却って逆効果となることもありますので次からのやり方の説明をよく参考にしてください。
 顎を積極的に治すセルフケアには、筋肉に対するのもの、関節の動く範囲を広げるもの、ストレッチがあります。
 次回からこれらについて解説していきます。

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③偏咀嚼
  手に利き腕があるように、食物を咀嚼するのにも利き咬みがあると言われています。顎関節症の患者さんに聞くと良く使う方に症状が出ている場合が多いようです。ただ片方の顎の動きが悪くなると、動きが悪い側の方が痛くても咬みやすい。つまり悪くない側で咀嚼するには、悪い側をより動かすことになる、あるいは動かないため悪い方で咬むことになるのでより悪くなるようです。普段はなるべく均等に咬むようにするといいかと思います。

④姿勢
 習慣になっている姿勢を見直してみましょう。
 今このブログをを読んでいる姿勢はどんな姿勢ですか?寝転んでいたり、頬杖をついていたりしませんか?背中を丸め、首を突き出して本を読んだりパソコンをしたり、テレビを見たりしていませんか?常に肩に力が入っていませんか?あるいは、片方だけで重いものを持つなどもバランスが悪くなりますね。普段の姿勢が、顎だけでなく、首や肩さらには腰にも負担をかけている場合が多いようです。頭痛と肩こりの原因として座っているときに骨盤が後傾して、頭が前に垂れていることが言われています。頭が首の真上、首が背骨の真上にくるのが良い姿勢の基本と言われています。また、長時間同じ姿勢でいるのは、筋肉や関節の血液の循環障害が起こりますので、リラックスして体を動かす習慣を作るようにすると良いと思います。一生懸命になっているときほど、息抜きを忘れないようにしましょう。

⑤楽器、スポーツ
 管楽器の練習を過度にすることで、顎の関節や筋肉に負担がかかり顎関節症になりやすいと言われています。練習時には適度な休みをとること、症状が強いようならしばらく休むことが必要でしょう。
 またスポーツにおいて、最近歯や顎の保護のためにマウスガードが義務化されている種目も増えています。たしかにぶつかり合うことや過度に噛みしめることで顎関節症となる場合があります。それを防ぐためにマウスガードをすることは必要ですが、そこで問題になるのは、適切な咬み合せや形態で作られていないマウスガードをしていることで逆に、歯の破折、骨折や顎関節症になるケースがみられることです。特にスキューバダイビングでは合わないレグレーターを長時間噛みしめていることで口が開かなくなる症例が多くスキューバダイビングシンドロームと言われています。マウスガードが必要な場合、スポーツ歯科という分野の勉強をしている歯科医に相談してください。
 スポーツを行う際、力を入れる時にかみしめているかどうかは議論されているところですが、少なくとも顎をズラして噛みしめていると顎には破壊的な力がかかることになるので注意が必要です。

⑥環境
 普段生活している環境も顎関節症の原因となることがあります。寒くなると噛みしめることや体をこわばらせる事が多くなり、血流が悪くなるため筋肉や関節が硬くなり、顎関節症の症状が出現しやすくなります。また最近では真夏になると、どこへ行っても冷房が強いため、うっかり薄着で出歩くと風邪を引いてしまうことがあると思います。職場の席が冷房機の前で、そこで寒い思いをしていることが実は顎関節症の原因であったなど笑えない話も実在しますので、周りの環境についても考えてみてください。

⑦ストレス
 顎関節症が典型的な心身症に含まれるという事をお話ししましたが、ストレスにより、噛みしめたりすることが多くなって筋肉や関節に負担が掛かることや、痛みに敏感になることで顎関節症状が悪化する事があります。
 ストレス自体は刺激に対する反応であり、ストレスがないと人間は生きていけないと言われています。問題はその大きさと受け止める側の状態です。たとえば噛みしめなどで顎に対するストレスが掛かりすぎれば顎が痛くなる。顎に対する負担をどうするか考えるように、日常生活で問題になっていることを整理してみて、それを解決していくことも必要ですし、あるいは自分ではどうしようもない問題に対しては気分を変える事や、相談できる相手を普段から見つけておくこと、場合によっては心療内科やカウンセラーなどの専門家を頼るのも良いかと思います。
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②寝る姿勢と舌の位置、呼吸法
 毎日のことですから寝る姿勢や枕の高さも顎関節症と関係していると言われています。一番良くないのは、うつぶせ寝です。仰向けで寝るのが顎にとっては一番負担が掛からないのですが、数年前仰向けに寝ることで、舌根沈下により気道がふさがれ、いびき、睡眠時無呼吸症候群、酸素不足による脳卒中などの弊害が生じるということが話題になりました。確かにうつ伏せや横を向いて寝ると舌は後ろに下がらないために、これらの症状は改善されることがあるようです。また、腰が悪い等、仰向けで寝られない場合もあると思います。ただ、うつ伏せや、横を向いて寝ることで顎が常に押し付けられることで負担が掛かってしまう。実際、顎関節症の患者さんに寝る姿勢を聞くと、症状のある方を下にして寝ているケースが見られます。また枕が高いと噛みしめやすくなるので良くないようです。
  最近、呼吸法について取り上げられることが多いようですが、口呼吸の弊害として口の中が乾き免疫力が落ちると言われています。口呼吸だと口を開いていることが多いため、舌の筋肉や口唇の回りの筋肉が衰えることで舌が後ろに下がり、気道がふさがれ、いびきや睡眠が浅くなることなど指摘されています。睡眠が浅くなると歯ぎしりも強くなる可能性もありそうですね。
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2)悪習癖
 ①昼間の噛みしめ、上下歯列接触
  今このブログを読んでいただいているわけですが、ちょっと画面から目を離し真っ直ぐに姿勢を正して座ってみてください。力を抜いて、心を落ち着かせてください。まっすぐ前を見て背筋を伸ばして目を閉じます。そしてゆっくり唇を閉じてみてください。どうでしょう、上下の歯は触っていますか?触っているのは、奥歯ですか?前歯ですか?また、その時に舌はどこにあるでしょうか?下の前歯に触っていますか?それとも上顎の歯茎に触っていますか?
 1日のうちで上下の歯が接触している時間はどれくらいか知っていますか?
日本だけでなく世界的にいろんな研究がありますが、どのデータを見てもだいたい20分程度です。どうでしょうか、驚かれた方もいらっしゃると思います。実際、診療室で患者さんにお話しすると、驚かれる方が多いです。実際、下の顎の骨は頭の骨と筋肉と関節でつながっているので、上下の歯が当たっていると言うのは、下の顎をずっと持ち上げていることになります。どうでしょう。例えば、手を軽く握りしめてください。強く握りしめてなくても、長く握っていれば手がこわばり、手を開くのに違和感があるかと思います。顎の筋肉や関節、あるいは歯も、ずっと力が掛かっていれば疲れてしまいますよね。ただ、これが習慣となってしまうと噛みしめていても気がつかないことがあります。
 次に両手をそれぞれ左右の頬に当てて、その状態で歯を軽く合わせてみてください。どうでしょう、頬の筋肉が硬くなったのが分かると思います。
では、今度は手鏡を持って、あるいは洗面所へ行って口を開けてみましょう。口を開けて舌や下唇の内側を見てみましょう。どうでしょうか?ギザギザしていませんでしょうか?噛みしめがあると舌や粘膜が歯に押し付けられるため、歯の跡がついてしまうのでギザギザになってしまうと言われています。特に舌の位置が口を閉じた時に下の歯にあたっていると、口を閉じているときに舌は下の歯を押すために顎に負担が掛かるとも言われています。口を閉じたら、舌は上の顎の歯茎にあたっているのが良いと言われています。
 さて、では歯が当たらないようにするにはどうしたらいいでしょうか?
  現在、歯科で歯が当たらない様に勧められている方法としては、貼り紙法という方法があります。歯を離そうと意識すると逆に疲れてしまいますよね。意識しないで歯を離す習慣を作ることが大切です。貼り紙は家や仕事場の目が付くところにそれぞれ最低でも10か所貼ってください。ここでのポイントは、普段は歯の事は意識せず、貼り紙を見た時だけ大きく息を吸って肩に力を入れ、息を吐きながら、肩の力を抜き、歯を離すことです。これによって、歯が当たると自然に離すと言う条件反射で離せるようになると言われています。
 ただそうは言ってもなかなか習慣を変えるのは難しいですよね。たとえば、靴を左側から履くのが習慣になっている人が右から無意識に履けるようになるのに一か月かかると言われています。
 また違う方法としては、例えば時間を決めて口を開けるようにする。時計の長い針が12を指した時に、3回一番大きく口を開ける。あるいはガムを噛んで柔らかくした後、それを舌の上で転がして丸くするのを続けることで歯が当たらない、顎にも力が掛からない、顎を動かすことで筋肉に血流が良くなり痛みも取れやすくなるなどの方法があります。
 いずれにしても、長時間同じ姿勢、特にうつむいた姿勢でいることは、肩こりや頭痛などの原因にもなりますので、時間を見て体を動かしリラックスすることは必要ですよね。
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